翻訳: 上平 哲<tez@kamihira.com>
Original: http://www.metasystema.net/essays/reply-to.html

Reply-To 書き換えは有用だと考えられる

メーリングリスト管理者に対する率直なお願い

Last revised: 3 January 2000


email メッセージはメーリングリストに再配送される際にある程度の 処理が必要になります。最小限度の処理としてエンベロープはバウンス先 が直接リスト管理者に向くように書き換える必要があります。

メッセージが処理されている最中にリスト管理者はメッセージヘッダ の一部を書き換え る機会が与えられます。多くのリスト管理者はリストに向けたReply-To ヘッダを追加したいと考えます。この変換は最も有用な書き換えの一つです。

管理者によってはReply-To書き換えは有害な -- 場合によっては 危険でさえあるような -- ものだと主張します。私はこれと反対のことを 主張します。つまりReply-Toヘッダをつけないのは もっと有害な効果がある、ということです。もしReply-To 書き換えが悪いアイディアであると思うのなら、私はあなたの気持ちを 変えたいのです。

RFC 822 と "テキストメッセージによる会議"

最初に考慮しなくてはならないのはRFC 822 です。それはemailの標準的な利用方法についての定義ですが、特に4.4.3節が 重要です:

        もう少し別の利用方法としては、自動配送サービスつきの"テキスト
        メッセージによる会議" のグループを支援するというのがあります:
        それにはその会議に送信されるすべてのメッセージの"Reply-To"
        フィールドにあるメールアドレスも含まれます; このフィールドに
        よって参加者はその会議に"返信" する際に、自分のメッセージが
        常に正しい配送となることを保証することができます。

この公式な承認は別としても、 Reply-Toヘッダを書き換え たいと思ういくつかの理由があります。以下は私の考えです。包括的なもの ではないかも知れませんが、認めざるを得ない論点ではないかと思います。

最小限の帯域利用の原則

``最小限の帯域利用の原則'' は、問題を起こさないようにするには良い ルールです。これは、インターネット上の email のトラフィックの量を 減らすような変更はどのようなものであれ(積極的に)行なうべき である、というものです。``最小限の帯域利用の原則'' はこれから議論しようと しているようなタイプの問題を避けるのを助けるでしょう。この原理は 破ることもできるように設計されたものですが、そうする前に よくよく考えることで、ある種の重大な間違いを避けることができるでしょう。

Reply-To 書き換えは意味のある機能を付け加えます

Reply-To は、それが存在しない場合にはできないような 選択肢を返信者に与えます; つまり、リストに対してのみ返信する という機能です。多くの(すべてではないにせよ)emailクライアントは "送信者に返信" あるいは "すべての受信者に返信" する機能を持っている という事実にもかかわらず、多くの購読者はリストに対してのみ返信 したいと考えており、それはこのどちらの機能を使っても実現できません。 それで、リストに対して返信することを保証するために、人は"すべての 受信者に返信" を選択しますが、これは普通、少なくとも二つの email メッセージを送信することになります。ひとつはリスト、もう一つは 元の送信者です。

これが元の送信者にとってとてもわずらわしいものになりがちですが、 それは同じ返信メッセージを二通受け取ることになるからです。さらに 多くの場合元の送信者は別の受信者も付けています。"すべての受信者に 返信" はこのような追加の受信者(ふつう、これらの人もそのリストに 参加しています)のそれぞれに対して返信を送るだけではなく、リストに 対する返信にもこれら受信者のリストを追加してしまいます。

追加された人それぞれが"すべての受信者にたいして返信"を使ってメッセージ を返信するというこの雪だるま式の効果で、こんどは彼らが送信する側と なり、次の返信でやはり受信者のリストを追加します。この結果受信者の リストはどんどん増えていきます。議論の主題が変わっていくにつれ、 最初は興味があったが、その後ずれていってしまったトピックを含むような メッセージのコピーを何度も受信してしまうのに気づくでしょう。これは そのリストから退会した後ですら続くのです

多くの人々はこのような重複はprocmailのフィルタを実装 することで比較的簡単に取り除くことができると言います。しかしこの態度は 単にUnix中心、あるいはアメリカ中心の物の考え方をしているのがマル出し です。それほど強力ではないオペレーティングシステムを使っている多くの ユーザーは重複メッセージを確実に取り除くための十分強力なツールを 持ってはいません。さらに多くのヨーロッパの国々では接続時間は ごとに課金されます。procmailを使っても重複した メールはフィルタする前にいったんダウンロードされてしまうので ヨーロッパのリスト参加者には余計なコストをかけてしまいます。

この最後の事実はこの問題は実際にはネットワーク帯域に関係したものだ ということを明らかにしています。''最小限の帯域利用の原則'' を適用 するとリストに向けたReply-Toヘッダを追加することは必要なこと である、という結論を得ます。

それは普通のメーラの動作をさまたげません

普通のメーラを使っていれば、Reply-To書き換えが新しい機能 を追加しているのがわかるでしょう。つまり、リストに対してのみ返信する という機能です。さらにそれは何かの機能を犠牲にしてはいません。 Pine の場合を例にとると、 Reply-Toヘッダがある場合、 ''"From:"アドレスの代わりに"Reply-To:"アドレスを使いますか?'' と 聞いてくることで、簡単に元の送信者のみに返信することもできます。 KMail ではさらに話しは簡単です。ハイパーリンクされた From アドレスの上で右クリックするだけで良いのです。

メーラにこの機能がない場合はそのメーラの開発者チームに要求してみて ください。どんなメーラでも何かイデオロギー上の理由でこんな簡単な要求を 拒否するような開発チームはまともな連中とは言えません。

選択の自由

Reply-To書き換えは新しい機能を付け加えているので それは実際には選択の自由を増やしています。単に リスト のみに返信できるだけではなく、元の送信者のみ、 あるいはすべての受信者に対して、という返信のオプションも依然として持って いて、簡単に選択できるのです。

いくつかのメーラは壊れています

不幸にもいくつかの貧弱に実装されたメールプログラムは "送信者に対して 返信" と "グループに対して返信" の機能が分離されていません。そんな メーラを使っているユーザはReply-To書き換えによって恩恵を 受けます。これによって直接リストに返信することが簡単にできるようになるからです。

さらにこの変更は普通のメーラを注意して使う人に害を与えることは ありません。普通のメーラではFromアドレスに対する返信 ができます。それで、貧弱な実装のメールプログラムを使う人と同じ、 それ以上の害を与えるのは親切ではないかも知れません。Reply-To ヘッダの書き換えは普通のメーラを使う人には害を与えることはないからです。

最小限の作業の原則

議論するようなタイプのリストでは、だいたい 90 パーセントの時間は リストに対する返信になると見積もることができます。書き換えをしないと ''最小限の帯域利用の原則''を破ることになる、か、真面目にリストのアドレス を入力しなければならないことになります。多くのすぼらな人は前者をとります。 つまり不要な email のコピーを、結局それを削除してしまうか、フィルター を設定するか(そのような機能をもったオペレーティングシステムを使っている 幸運な人にとっての話しですが)してしまう人にも送ることになります。

いっぽう、10パーセント程度の時間については、送信者に返信する方が 好ましい場合になります。返信する人がバカなメーラを使っていたとしても (この決定は多分利用者自身の責任でしょうか)、最悪のシナリオは10パーセント の時間、そのアドレスを入力しなくてはならない、というものです。もちろん 自分のアドレス帳にすべての返信者を追加してあれば、この入力は最小限に 押えることができます。

で、全体として、どちらが少ない作業でしょうか: 90パーセントの時間リスト アドレスを入力するか(そして多分フィルターを設定するか)、あるいは 10パーセントの時間個別のアドレスを入力するかのどちらが?

私は常にReply-Toヘッダを書き換えるほうを選びます。 ごきげんよう。

人は自分の間違いに責任があります

管理者によってはReply-Toヘッダの書き換えは、人を驚かす ことがあり、そうなった場合に有害であるかも知れないと主張します。 彼らは管理者は私的なメッセージが間違ってリスト全体に流れてしまう可能性 を避けなくてはならないと言います。

これは管理者の責任ではありません。自分の間違いは自分の責任です。 人を傷つけるような私的なメールを送る場合、あるいは公開されれば恥ずかしい ような内容の場合、公開されたメッセージへの返信ではなく、直接それを 送るべきでしょう。またそれを本当に送るべきかどうか少し考えてみるべき でしょう。間違いを見つけるのに、普通のメーラを注意して使って いる人にとっては、この程度の注意だけで十分です。

とにかく、メーリングリストから受け取るメッセージの件名に明らかな 見出しを付けるのはリスト管理者にはまったく簡単なことです。もしメーリング リスト管理プログラムが件名に"[リスト名]"を付けるオプションを持って いないのであれば、その機能があるものに乗り換えましょう( たとえば GNU MailMan とか Majordomoなど )

さいごに...

まだ確信が持てないなら、これが最後のお願いです。ほとんどのメーリングリスト は特定のトピックについての議論のために作られています。あなたのリストが この目的のものなら、リストに直接返信するようなReply-Toヘッダ を付けることを強く勧めます。これは興味を感じているすべての人 が確実にあるスレッド全体が利用できるようにする手助けをします。

ある問題に対する解決策をリストアーカイブ中で検索した結果、質問があっても 答えがないようなケースは数えきれないくらいあります。しかし、そのリストに 質問を投稿するとベテランからそれはもうすでに議論されていて、アーカイブ を検索するようにと言われることもあります。もし幸運であれば比較的新しいメンバが その答えに対する回答の返信を私的に転送してくれるかも知れませんが。

こうして、Reply-Toヘッダの書き換えは真剣な議論のために用意 されたそのようなリストでは意味があります。もしそのリストの主目的が何かの アナウンスやその他一方向的なものであれば、ここでの議論は無視することが できますが。

それが人々が求めていることです

私はいままで書き換えされたメーリングリストと書き換えしないものの両方に 参加してきましたが、書き換えしないメーリングリストではReply-To がリストを向くように変更するようにという要求が繰り返しおきます。すでに 書き換えされたリスト上では、それを変更するように要求されることはほとんど ありません。

結論

多くの人はReply-Toヘッダを書き換えたいと感じています。 彼らはリストに対する返信が楽になると信じており、リストへの流量が 増えるだろうと期待しています。書き換えはこの両方を実際におこない、 とても良いアイディアだと言えます。繰り返すと:

 

おまけ

もちろん、すべての人にとってReply-To書き換えが好ましく 生産的であると言うにはいくつかの詳細について触れておく必要があります。 潜在的にReply-To書き換えが深刻な問題となるのは多分 メールループの可能性です。それはリストのサーバが検出し防ぐべきものです。 この機能を実装するバッチを持っている人がいれば、私は喜んであなたの ftp サーバ上のパッチに対してリンクを張ろうと思いますし、私の ftp サーバ上 でも利用可能にしてもかまいません。

さらにFromアドレスに返信する機能を持たないメーラに対する パッチが必要です。sdhill at metasystema.netに対して リンクまたはパッチそのものを送ってください。よろしくお願いします。

パッチ

Emacs の rmail に対するパッチは http://www.metasystema.net/pub/patches/emacs/rmail-query-reply-to.elにあります。

反対意見

このエッセイはもともと Chip Rosenthalの Reply-To Munging Considered Harmfulに対する反応として 書かれたものです。()

Simon Hill
sdhill at metasystema.net