更新:2010/04/29
このページは、SVG 1.1 仕様のこの日本語訳に特有の事情を記載したものであり、同仕様の翻訳の一部ではありません。(ただし、二次的著作物としては不可分のものであるとみなされます。)
翻訳開始日:2003 年 4 月 19 日
翻訳更新日:インデックスページ冒頭に記載
翻訳者:広瀬行夫
(連絡先)
この翻訳のアーカイブも配布しています(インデックスページ参照)。
これは仕様書であり一般の文章ではないので、意味内容を正確に伝えることは言うまでもなく、解り易くかつ読み易くすることを基本方針としています。仕様書の性格上正確さや厳密さが要求されるので、表現がくどくなるのはある程度致し方ない所ですが、それを損なわない形でなるべく簡潔な表現にしていくつもりです。原文の表現が解りにくい箇所では敢えて表現を補った箇所もあり、必ずしも原文と一対一に対応した逐語的な訳にはなっていません。原文を解体し、再構成していることもあるので、文と文が対応していなかったり、順序が入れ替わっている箇所もあります。英語の性格上、同じ内容に対し異なる単語・表現を使う傾向がある(英語には同義語が多い)ので、翻訳では表現の意味内容を吟味した上で、同じ内容のものはなるべく統一された表現にした(する)つもりです。翻訳は現在のところほぼ完成状態ではありますが、所々変更される可能性があります。
この翻訳に対するご指摘 - ここはこう解釈すべきである、ここが間違っている等々 - あるいはご意見、ご感想などを歓迎します。この仕様書は他の仕様書(CSS など)をベースにしているところがあり、その全てを訳者が把握できているわけではありませんですし、訳者の英語力も万全とはとてもいえないので、意味内容を把握しきれていない部分があります。そのような部分にはできる限り訳注を付けていますが、それらについての正しい解釈の仕方/ヒントなどを訳者までご一報下されば大変助かります。
この仕様で見つかった誤りや矛盾点、曖昧な部分などに対する修正案が エラータ にまとめられています。それらは単なる誤記から実装や文書作成に影響するものまで様々ですが、この訳では利用者の便宜を図るため、それらを「エラータ」という見出し語とともに本文中に取り込んでいます。公開されたエラータ全てではいませんが、 2010/04/29 時点で "proposed" として公開されているものの大部分は取り込まれています。
この仕様はCSS によるスタイル付けがなされています。スタイルシート(CSS )対応のブラウザの方が読み易くなるはずです。スタイルシート対応ブラウザでは以下のようなスタイル付けがされています:
cite
タグによりマークアップされ、
この部分と同じ背景色と装飾が施されています。
del
タグにより削除部としてマークアップされ、 ins
タグにより挿入部としてマークアップされ、この部分と同じ背景色と装飾が施されています。
原文と日本語訳の併記が煩わしい方は、ダウンロードしたアーカイブに含まれているスタイルシートを調整することにより、原文を隠して閲覧することが可能になります(スタイルシート対応ブラウザのみ):スタイルシートの最後の方に
.transOriginal {font-family: helvetica, sans-serif; background-color: #999999; }
と書いてある行があります。そこを編集して
.transOriginal {display: none; font-family: helvetica, sans-serif; background-color: #999999; }
のように変更してやると原文が表示されないようになります。
この翻訳におけるファイルの文字エンコードは Shift_JIS, 改行コードは CR ( macintosh )に設定してあります(例示用の SVG ファイルなど翻訳の対象でないファイルは原文そのままの状態です。また、翻訳では JIS コードの文字セット(ISO-2022-JP )以外の文字、あるいは機種依存文字は避けるようにしています。
原文の1章で説明されていない用語(多くはSVG 特有でないもの)やこの文書の文脈で解釈すべき単語などについての一部の対訳を下に挙げます。正式な訳語でないものや不適切な訳もあるかもしれません。尚、この対訳はまだ確定したものではなく、流動的です。一部の用語に対する訳語は変更される可能性があります。
(訳者独り言:訳語に原文のカタカナ表記と和文表記のどちらを利用するかは悩ましい所である。カタカナ表記には訳語としての表現がほぼ統一され、それが専門用語らしく見え、原語での名称が明らかになる利点がある:例えば「ベースライン」の和文表記には「基底線」, 「並び線」, 「整列線」などがあり、他の仕様の日本語訳と一貫性がとれないおそれがある。あまりにも一般的な和文表記 - 例えば「path 」を「パス」でなく「経路」と表記するなど - では、例えば何かの文章で「経路」という言葉が使われた時に、それが SVG の path を指していることが判り難かったり、あるいは検索が難しくなる欠点もある。しかしながら、その一方で冗長になったり、漢字表現による意味の読取り易さが得られない欠点も生じる:例えば「バウンディングボックス」より「包含ボックス」の方が解り易いであろうし、「文書片」が「ドキュメントフラグメント」ではいかにも長い。この点について、この翻訳では明解な基準は設けていない(強いて言えば上で述べた様なそれぞれの表記の長所/短所を総合的に判断している)。訳者としては、あまりカタカナ語が氾濫しすぎるのは日本語の利点を失うことになる - いっそのこと漢字なぞやめてひらがなと英単語だけで表記してしまえということにもなる - ので、和文表記もできるだけ使いたい所ではある。こうした用語に統一された和文表記をあてがう動きはあって欲しいように感じる。)
原文 | 対訳 | 頻出する章 | 説明 |
accessibility | アクセシビリティ | 身体的不利を持つ人でも利用し易くするといった意味で用いられる。「アクセス性(アクセス可能性)」という訳でも良さそうだが、あまり使われていないようだ。 | |
additive | 加法的 | アニメーション | 「加算的」という訳語も見られるが、「加算が可能である」という観点からすれば「加法的」の方が適切に思える。「可算」という数学用語とも紛らわしいし。 |
advance | アドバンス | テキスト, フォント | 直訳は「前進/進捗」。テキスト描画のときに、一つのグリフを描画後に次のグリフの描画に移る前に行進行方向に描画位置がずらされる量を指す。文字間の調整を無視すればグリフが描画されるときの文字幅と同義になる。 |
alpha | アルファ | RGBA 画像の不透明度を表す A 成分を意味する。 | |
ancestor | 祖先 | 要素Aが要素Bの「祖先」であるとは、XML 文書木の木構造においてAがBの根元側に位置する(AがBを直接的/間接的に含む)ことを意味する。 | |
angle | 角度 | 角の大きさを表すが、単位に度が指定されていることを含意しているわけではないことに注意。 | |
animation, animate, animatable | アニメーション, アニメーションする, アニメーション可能 | アニメーション | 長ったらしいので「動画」と訳すことも考えられるが、SMIL アニメーションの本来の定義は属性値を時経過とともに変化させるという抽象的なものなので、「動画」では具象的に過ぎるように思われる。 |
anti-aliasing | アンチエイリアス | 低解像度の表示装置において文字や図形の輪郭が粗く見えるのを緩和するために境界部分に中間色を補間して、なめらかに見せること。訳語としては「アンチエイリアシング」より「アンチエイリアス」の方が一般的のようだ(google 検索の結果)。 | |
aspect ratio | 縦横比 | 座標系, 変換, 単位 | 「アスペクト比」という訳語もあるが、より解り易い「縦横比」を採用した。 |
attribute | 属性 | XML 用語。要素を修飾するもの。例えばHTML のアンカータグ(A タグ)のリンク先を指示する href="http://www..." など(href が属性名、"http://www..." が属性値)。 | |
authoring tool | 文書作成ツール | 文書を作成・編集するためのプログラム。人からの利用(対話的操作)が含意されている。 | |
baseline | 基底線 | テキスト, フォント | 頻出する用語なので、「ベースライン」より短く「基底線」とした。フォントに詳しい方には「ベースライン」の方が通じやすいかもしれないが、現れる場所はテキストとフォントの章のみなので戸惑われることはないように思われる。「並び線」「整列線」などと訳されることもある。フォント情報処理用語 では「並び線」と訳されている。 |
Bézier | ベジェ | パス | ベジェ曲線とは代数曲線の一種であり、ベクターグラフィックスの世界における曲線の表現に最もよく利用されているものだろう。Pierre Bézier というフランス人数学者が考案したものらしい。発音的には「ベジエ」と記すべきようだが、訳語としては「ベジェ」が定着しているようだ。 |
bidirectional | 双方向 | テキスト | 双方向テキストとは、横書きにおいて左→右(欧文など)と左←右(アラビア語など)の両方向が入り混じったテキストを指す。「両方向」と訳されることも多いようだが、どちらが正しいのか判らない。対話性(interactivity )も双方向性と訳されることが多いので区別するためにむしろ「両方向」の方が良いのかもしれない。検討中。 |
binding | バインディング | 「bind 」の直訳は束縛とか結びつけといった意味。バインディングとは、何らかの仕様(この仕様では主にSVG のDOM インターフェース)を特定の言語(特にプログラム言語)から利用できるようにする目的で言語依存の形で結び付けたものを指す。 | |
blend | 混色 | 「混色」とは言ってもアルファチャンネルも関るので、「ブレンド」にすべきかもしれない。検討中。 | |
bounding box | 包含ボックス | 「バウンディングボックス」ではまどろっこしいので「包含ボックス」。より厳密に「最小包含ボックス」とすべきかもしれないが、「包含ボックス」でも十分意味が伝わるように思われる。「境界ボックス」という訳語もあるようだ。ボックス=囲うという意味で「包含ボックス」。以前は「包含矩形」としていた。 | |
cascade | カスケード | CSS 用語。直訳は「階段状に連続した滝」。CSS によるスタイル付けを適用する処理を指す。その処理のされ方(どのスタイル規則を優先させるかの仕組み)が階段状の滝を連想させることから付けられた名前と思われる。 | |
cell | セル | テキスト, フォント | グリフのセルとはグリフが描画されるときに占める矩形領域を指すものと思われる。(厳密な定義はよくわからない)。 |
character data | 文字データ | XML においては、テキストを表現するユニコード文字で構成されるデータを指す。 | |
channel | チャンネル | RGBA 色の各成分、赤(R),緑(G),青(B),不透明度=アルファ(A) を表す。「チャネル」という訳が正しいような気もするが、普及率は「チャンネル」の方が高い。 | |
child | 子 | XML 文書木において要素Aが要素Bの「子」であるとは、AがBに直接的に包含されていることを意味する。 | |
clipping path | クリッピングパス | この用語の意味については 14.1 で述べられている。 「クリッピングパス」という訳語は一般的なようだ。「切り抜きパス」とする方が解り易いと思うのでそちらを使いたい気もするが普及率は前者が断然上(google 検索の結果)。動詞の「clip 」は「切り取る」などと訳している。 | |
collection | コレクション | 特定の目的で関連したものを集めたものという含意がある。通常は「collection of 」を「一連の」などと訳しているが、関連した属性やプロパティの集まりを指すモジュールにおける用語として使われるときは「コレクション」としている。 | |
color | 色/カラー | 主に「色」としているが、「color profile 」は「カラープロファイル」が一般に使われているようなので、そちらを使っている。 | |
computed value | 計算値 | CSS 用語。例えばプロパティに指定されている値が相対的な単位を持つ場合、計算値はその値を(プロパティで定義された規則に従って)絶対的な値に換算したものを表す。 | |
container element | コンテナ要素 | 文書構造 | |
content | 内容 | 文書構造 | XML 用語。XML 要素や文書の中身を指す。一般的な単語なのでより専門用語らしく「コンテント」とすることも考えられなくはないが、ちょっとまどろっこしい。 |
coordinate | 座標/座標成分 | 座標系, 変換, 単位 | 「座標」と書くと日本語では空間の点を指定する複数の値の対を意味するようだが、英語では「coordinate (x, y)」とか複数形にして「pair of coordinates 」などと書かない限り、座標を指定する個々の成分の意味になるようだ。「odd number of coordinates 」を「奇数個の座標」などと訳すわけにはいかない。そんなわけで個々の成分を指す場合は「座標成分」と記している。 |
cumulative | 累積的 | アニメーション | |
descendant | 子孫 | 要素Aが要素Bの「子孫」であるとは、XML 文書木の木構造においてAがBの末端側に位置する(AがBに直接的/間接的に含まれる)ことを意味する。 | |
declarative | 宣言的 | 何らかの効果を得るための処理を記述するのに汎用的なプログラム言語ではなく、その目的のために用意された専用の言語機能を用いて記述することを指すものと思われる。 | |
default value | 既定値 | 属性の値が指定されていない場合に暗黙にその属性に設定される値を表す。 | |
device | 装置 | 入出力における物理的な装置/ハードウエアを指す。 | |
dispatch | 配送する | 対話性 | 発火されたイベントをそのときの状況に応じて適切な要素へ送る(要素に結び付けられたイベントハンドラに渡す)処理を指す。「配送する」という訳は訳者が適当に思われるものとしてあてがったもの。 |
distance | 距離 | 座標系, 変換, 単位 | 「distance-along-the-path 」は「パスに沿う距離」(パスの始点から辿っていくに従ってパスの長さを計量していくことによる距離)としているが、今ひとつしっくりしない。 |
document | 文書 | 文書構造 | 「ドキュメント」と訳されていることも多いが長ったらしいので。 |
draw | 描く | いちおう「render 」の訳に使われている「描画する」と区別させたつもりだが、「描画する」としている箇所もある。 | |
duration | 持続時間 | アニメーション | アニメーションが実行される時間の長さ。 |
element | 要素 | 文書構造 | XML 用語。XML 文書の構造を組み立てる基本的な部品(HTML タグのようなもの)。要素は他の要素を含む(入れ子にする)ことができ、全体として要素の木構造が構成される。 |
entity | 実体 | 文書構造 | XML 用語。「エンティティ」とも訳される。例えばHTML のタグ文字 <, > など構文上本文に記述できない文字などを記述できるようにするために特別に用意された参照用の文字列 <, > など、文書の元々のデータとして存在しているかのような内容の参照を行なう単位を意味する。参照先の特定に利用される名前を実体名(先の例では lt, gt )と呼び、参照先の中身を実体の内容と呼ぶ。 |
event | イベント | 対話性 | 利用者の行為(例えばマウスクリック)あるいは何らかの状態の変化が生じた時にシステムやプログラム(のオブジェクト)へ通知されるもの(どのような種類の行為あるいは変化であるかなどの情報を包み込んだオブジェクト)。 |
exception | 例外 | 「例外がレイズされる」,「例外処理」といった使われ方をする。意図されていないパラメタがプログラムに与えられたなどの理由で正常な実行が出来ないときにプログラムを動かしているシステムが生じさせるもの。通常はその状況の詳細情報が一定の形式のオブジェクトにくるまれて、システムまたはプログラムに用意された例外処理機能に渡される。 | |
facility | ファシリティ | 機能,枠組み他 | 直訳は扱いやすさとか容易さ、特定の目的(を達成するのを容易にする)のために用意された、施設/設備などの何物かといった意味で、対応する和訳は無いようだ。文脈によって「機能」,「枠組み」などと訳しているが、今述べた含意がどうも伝わりにくいような気がしてすっきりしないものがある。 |
feature | 特色機能 | 直訳は特色、呼び物。専門用語としての「特色機能」という命名は聞いたことが無いので、「feature string 」などは「フィーチャ文字列」などとすべきかもしれないが、「フィーチャ」という訳語もあまり一般的に利用されていないようなので、「特色機能」を採用させてもらうことにする。 | |
fill | フィル/内部への塗り | 「塗り潰し」と訳したい気もするが、「paint = 塗り」とまぎらわしいので避けた。「ストローク」と並立する用語でもあるので、カタカナのまま「フィル」を採用することにした。「内部への塗り」としている箇所もある。 | |
filter | フィルタ | フィルタ効果 | 「filter effect 」は「フィルタ効果」としている。「filter primitive 」は直訳的に「原始フィルタ」としているが、これは「フィルタプリミティブ」の方が適切かもしれない。要検討。 |
fragment | 片/文書片 | 文書構造 | XML 用語。XML 文書木において一つの部分木をなす文書の構成部分を指す。XML の構文上、部分木は文書内で連続するテキストになるので「fragment - 片」という言葉が利用されているものと思われる。「フラグメント」と訳される方が多いが、基礎的な用語でもあり簡潔にするため「片」を利用させてもらうことにする。「fragment 」単独で現れた場合は意味を限定させるために「文書片」としている。 |
generator | ジェネレータ | 一定の形式のデータを生成することを目的とするプログラム。利用者との対話性は意識されない。 | |
gradient | グラデーション | 直訳は「傾き・勾配」といった意味だが、ここでは色を徐々に変化させる塗り方を指す。 グラフィックスの世界では「グラデーション」と訳されるのが一般的のようだ。 「radial gradients 」は「放射型グラデーション」、「linear gradients 」は「線型グラデーション」としている。(発音的にも意味的にもグラデーションは「gradation 」なのにどうして「gradient 」なのだろう?) | |
grammar | 文法/言語/構文 | 「文法」と訳すのが普通なのだが、文脈によっては感覚的に「言語」や「構文」などと訳している部分もあって、正直いって訳者の認識には多少の混乱があるかもしれない。 | |
graphic | グラフィック/グラフィックス | 複数形の「graphics 」はグラフィックス全般を指していると思われる所ではそのまま「グラフィックス」としている一方、一つ一つのグラフィックを指すような場合は、「グラフィック」としている。全部「グラフィックス」に統一した方がいいような気もする。 | |
handler | ハンドラ | 対話性 | イベントハンドラとは、イベントが通知された時に一定の処理を行うために起動されるプログラムのルーチンを指す。 |
hint | ヒント | フォント | フォントのヒント情報とは、フォントをディスプレイなどの比較的低解像度の装置に描画する場合に、文字のつぶれを可能な限り回避し、視認性を高くするためにフォントに付加される補助的な情報を指すものと思われる(正式な定義においてはこの種のもの以外の情報も含まれるのかもしれないが、訳者には定かではない)。 |
ideographic | 表意文字 | テキスト | ideographic は、いわゆるユニコードにおける CJK 統合漢字あるいは Ideograph 領域に割り当てられた文字を明示的に指しているのかもしれない。日本の読者なら「統合漢字」の方がしっくりするであろう。しかしながら、この仕様書の文脈においてはより一般的概念を表す「表意文字」の方が適切に感じるので、こちらを使わせてもらうことにする。 |
image | 画像 | 必ずしもラスター画像を指すわけではないことに注意。 | |
implementation | 実装 | 「実装する」とは、ある機能または仕様を現実に動作するものとしてプログラムに追加する、あるいはプログラムを新しく開発すること。 | |
inherit | 継承する | CSS 用語。プロパティの継承とは、その値が親要素から暗黙のうちに子要素のプロパティとして利用(継承)されることを指す。 | |
initial value | 初期値 | プロパティの初期値とは、そのプロパティが上書きされていない限り利用/継承される既定の値を表す。属性の既定値とよく似た概念だが、属性においては値が指定されていないときは常に既定値が利用されるのに対し、プロパティが指定されていないときに利用される値は初期値とは限らない(祖先要素で上書きされた値を継承している可能性がある)。 | |
inline | インライン | AをBにインラインに埋め込むとは、Bの中にAへの参照でなくAそのものを記述すること。 | |
inline-progression-direction | 行進行方向 | テキスト | 文字どおり、テキストが描画されるときの行の進行方向を意味する。すなわち縦書なら上から下へ等々。「書字方向 - writing direction 」という言葉も現れるが、ほぼ同じようなものと考えて良いだろう。 |
interpolation | 補間 | アニメーション, フィルタ | 補間とは、離散的なデータ(飛び飛びの値)が与えられたときに、個々の値の間を合理的につないで連続的なデータを復元する、あるいはより稠密なデータを作り出すことを意味する。 |
instance | インスタンス | 直訳は「実例」。インスタンスとは、ひな形から複製された実在としてのオブジェクトを意味する。 | |
interact, interactive, interaction, interactivity | 対話する, 対話的, 対話, 対話性 | 対話的(インタラクティブ)であるとは、利用者とプログラムとの間で対話的操作(プログラムが利用者の操作を受け付けてその反応を返す)が可能であることを指す。「双方向」という訳も一般向けに使われていたりするが、こちらは通信端末どうしあるいは端末とサーバとのやりとりに重きが置かれているように感じる。また、動詞のときに「双方向する」などと書くのは変だし、テキストの書字方向の文脈での「双方向」と重複させない意味もある。 | |
interface | インターフェース | 直訳は(相互に)作用を及ぼす境界あるいは接点。プログラミングの文脈では、プログラムやシステムが別のプログラムから利用される目的で外部に提供/公開している規約、具体的には一連のルーチンや変数の組を意味する。ユーザーインターフェース(UI)とは、プログラムを人間から利用しやすいようにする目的で設計されたプログラムと人間の操作を仲介するプログラムあるいはそのデザインを意味する。 | |
layout | 配置 | テキスト | 「配置」は一般的すぎるきらいもあるので文脈によっては「レイアウト」が使われている所もある。 |
linear | 線型 | 一般的意味としては変化の量が一定であって、グラフにすると直線になるようなことを表す。「線型空間」という場合は、加算/スカラー積が可能であって、それらの演算に関して閉じていることを意味する。「線形」という訳もあって、こちらの方がより多く使われているが、元々は「線型」と訳されていたようで議論も分かれているようだ。「shape = 図形」とはっきり区別する意味も込めて、この訳では「線型」とした。 | |
marker | マーカ | ||
mask, masking | マスク | この用語の意味については 14.1 で述べられている。 「masking 」も「マスク」としている(文脈に則して適宜「マスク処理」などと言い換えている)。 | |
magnify | ズームとパン | 対話性 | 「magnify 」の直訳は「拡大」。利用者による文書の拡大(縮小)表示またはその行為を指す。拡大操作には原点をどこかにとることも含まれるので、数学的には並進も含意される。単に「拡大」とか「拡大縮小」のように表記すると意味が正確に伝わらなくなるおそれがあるので、「ズームとパン」と訳させてもらうことにする。 |
media | メディア | 「媒体」という訳もある。 | |
method | メソッド | DOM で定義されているインターフェースのメソッド(一定の処理を行うルーチンのようなもの)を指す。「method call 」は「メソッド呼び出し」としている。 | |
module | モジュール | 一般的には何らかの構造物を組み上げるための素材となる規格化された基本単位を意味する。ここでは仕様を関連する機能のまとまりに分割したものを指すと考えれば良いであろう。 | |
motion | モーション | アニメーション | |
node | ノード | 一般的には木構造や階層構造などのグラフ構造における頂点(枝分かれの分岐点や端点など)を指す。例えばXML 文書では個々の要素を指し、DOM 木では木を構成する個々のオブジェクトを指す。 | |
normative | 正式な | 仕様の一部として見なされるべきものという意味。 | |
name space | 名前空間 | 文書構造 | 異なるXML 言語を混在させるときに、それぞれの語彙が衝突しないようにするために考え出された枠組み。それぞれの言語が固有の「名前空間」を持つ。言語間で同じ名前の語彙は名前空間接頭辞を付けることにより、どちらの言語のものかを区別できるようになる。 |
object | オブジェクト | 直訳は「物」とか「対象」。ここではおおむねインスタンスを指すものと考えてよさそうだが、訳者にはこの言葉が表す概念をきちんと説明できる自信は全くないので、その使われ方から理解していただくというより他ない。強いて述べれば操作の対象とか一定のふるまいを持つ何かといった、外から眺めてみたときの「モノ」を表すのではないだろうか。 | |
one corner | 第一頂点 | 「one corner of a rectangle 」(矩形の第一頂点)とは矩形の4頂点のうちX,Y座標がともに小さい方をとった頂点(矩形がそのままディスプレイに表示されたときは左上頂点)を指すものと思われる(この句の正式な定義は見つけることができなかった)。 | |
opacity | 不透明度 | ||
outermost | 最も外側の | 文書構造 | XML 要素の文書内での位置についての記述であり、XML 文書木で言えば最も根本側に位置することと同義である。ちょうどXML 文書をテキストデータとして眺めたときに要素の開始タグ/終了タグが先頭側/末尾側に最も近いことに対応する。 |
outline (of a shape) | 外形線 | 図形の外形線は図形の内側を通ることもあることに注意(例えば自分自身と交差するパスによる図形など)。そんなわけで、「輪郭」ではなく「外形線」と訳す方が適切に思えた。 | |
paint, painting | 塗る, 塗り | フィルまたはストロークを図形に適用すること。ただし、「paint server 」は「ペイントサーバ」と訳している。 | |
pan | パン | 一般的な意味は、カメラの向く方向を変えながら撮影すること。ウィンドウに表示されている画像などをマウスで掴んで動かすなどの操作によりスクロールさせることを指す。スクロールにはいわゆるスクロールバーあるいはウインドウやフレームの存在が意識されているが、パンにはそれが意識されていない。SVG の文脈では2次元なので、このこと以外に違いは無いと思われる(3次元の場合のパンとスクロールは物理モデルとしての意味が異なり得る)。 | |
parent | 親 | XML 文書木において要素Aが要素Bの「親」であるとは、AがBを直接的に包含していることを意味する。 | |
parse, parser | 構文解析する, パーサ | パーサとは一般に一定の構文規則のもとにデータを走査して解読するプログラムを指す。ただし、意味内容の解釈は一般に含まれない。以前は「走査解読」と訳していたが「構文解析」が一般に利用されているのでそちらを採用。 | |
path | パス | パス | 直訳は一本の道とか筋といった意味。グラフィックスの世界ではそのまま「パス」と訳されることが一般的のようだ。「経路」と訳すのでは一般的に過ぎるきらいがあるので「パス」を採用させていただく。 |
pixel | 画素 | 単位としては、物理的な装置の画素あるいはラスター画像の画素とは必ずしも一致しないことに注意。 | |
polyline | 折れ線 | 「多角形(polygon )」との違いは、開いた図形であること。 | |
premultiplied | 積算済み | 画像の合成等における色の計算公式などにおいて、色を表す変数の値が実際の色チャンネルの値とアルファチャンネルの値(不透明度)との積をとったものであることを意味する。 | |
presentation attribute | プレゼンテーション属性 | スタイル付け | 「表示属性」という訳もあるが、ちょっと違うような気もしなくはない(presentation には「演ずる」という意味も含まれている様なので)。長ったらしいので「演示属性」などという造語を利用したくもなる。 |
profile | プロファイル | 直訳は横顔とか概観図といった意味だが、仕様などを参照される/利用される目的で一定の形式にまとめたものと考えれば良いだろう。人物の紹介などでよく使われている「プロフィール」は、どうもフランス語の発音から来ているようだ。 | |
property | プロパティ | CSS 用語(スタイルシート用語)。直訳は「所有」とか「資産・所有物」あるいは「ものの性質」といった意味。「特性」という訳語が使われることもあるようだ。スタイルシートと継承などの仕組みにより、プロパティの種類に応じた一定の種類/範囲の要素に対し、プロパティの種類と値に応じた何らかの効果を選別的かつ包括的に与えることが可能になる。スタイルシート, style 要素, 要素の style 属性(スタイルシート言語がCSS ならば例えば: style="fill:red; stroke:blue; stroke-width:3")により指定される。 | |
raise | レイズする | (システムが)例外を発生させること。あるいは、例外処理の過程における例外オブジェクトの伝達を指す。「例外」参照。 | |
raster image | ラスター画像 | JPEG やPNG 形式など、色を持つ点の集まりで構成された画像。拡大するとドットが目立つようになる。 | |
rectangle | 矩形 | 「長方形」と訳すことも考えられるが、「矩形」の意味には回転されていない状態(辺が座標軸に並行)も込められているように感じるので。 | |
render, rendering | 描画する, 描画 | 「render 」には「翻訳・解釈して表現・演出する」といった含意がある。ここでは主に内部的な処理を施した後、視覚表示装置/キャンバスに描画出力する意味に使われているので、単に「描画する」とした。「描画する」より「出力する」の方が適切な場面(例えば音声など)もあり、そのようにしている箇所もある。「rendering 」の訳には「レンダリング」が一般的に用いられているので、「render 」も「レンダリングする」と訳すことも考えられるが頻出する言葉だけにちょっとまどろっこしい。従って、「rendering 」も混乱を避ける意味で「描画」と訳すことにした。 | |
resampling | 再標本化 | 「sample - 標本」参照。 | |
resource | リソース | 文書構造 | 「資源」という訳もある。一般に、データを構成する素材を指す。 |
root | ルート | 木構造(tree を見よ)における根元のノードを指す。例えば「ルート要素」は「文書木」における根元の要素を指す。 | |
sample, sampling | 標本, 標本化 | 標本化とは、連続的なデータ(すなわち連続的な写像)が与えられたとき、一定の間隔ごとに切って代表値の集まりを抽出することであり、標本化された結果を標本と呼ぶ。現実の風景の写真をスキャナーで読み取ってデジタル化したラスター画像は標本の一例である。再標本化(resampling )とは、一度標本化された結果を補間などにより連続的なデータに戻してから別の間隔を用いて標本化することを指す。 | |
scale, scaling, scalable | 伸縮させる, 伸縮, スケーラブル | 座標系, 変換, 単位 | 伸縮(変換)とは、X軸/Y軸あるいはその両方に沿って伸縮させることを意味する。 SVG の「scaling 」にはX軸とY軸で不均等な変換が含まれているので「等倍」では不適切になる。 解像度に依存しない変換が可能という意味で主に使われている「scalable 」は「スケーラブル」としている。 |
scope | 可視範囲/有効範囲 | 「有効範囲」の方が解りやすそうだが、「可視範囲」と訳す方が適切な場合もある様だ。 | |
script | スクリプト | Javascript のようなインタープリタを介するプログラミング言語を指す場合もあれば、一定の自然言語圏(の表記に使用される文字群と表記規則のセット)を指す場合もある。ラテン (ローマ) 文字を使用する西欧諸言語はローマン・スクリプト等々。こちらの意味で使われるのはほぼテキストの章においてのみである。 | |
segment | 区分 | パス区分とはパスの頂点から次の頂点までのパスの一部分を指す。 | |
selector | セレクタ | CSS 用語。スタイル付けが適用される対象範囲を限定させるための規則を指定するもの。「選択子」と訳されることもある。 | |
semantics | 意味内容 | データや規則などが持つ「意味」を指す。シンタックス(データや規則の形式や構造)に対応する概念。栗原潔氏のコラムに解り易い説明が載っている。 | |
shape | 図形 | 「形」では語義が広いので「図形」と訳してより幾何的意味に限定させた。「形状」という訳も考えられるが何らかの特徴が類似した一定の範疇の形といった意味が入ってしまうように思うのでやめた。 | |
sibling attribute | 隣接属性 | この言葉の明確な定義を記述した文書が見当たらないのだが、要素のある属性の隣接属性とは、同じ要素における他の属性を指すものと思われる。 | |
skew | 斜傾 | 座標系, 変換, 単位 | 「斜傾」(変換)という訳語は訳者が適当にあてがってみたもの。「スキュー」とか「シアー」とするのが一般的かもしれないが、なじみの無い方にとっては「斜傾」の方が感じを掴み易そうだ(もっともこの仕様を読まれるような方には常識的なことかもしれないが)。他の変換(伸縮, 回転, 並進)と同じように二字熟語にすることにもこだわった。 |
stand-alone, standalone | 独立 | 部品として利用されるものではなく、それだけで完結しており利用できるという意味。「自立」と訳す方が良いかもしれない。 | |
stroke | ストローク/外形線への塗り | 直訳は一描きで線を一本描くといった意味。「外形線への塗り」としている所もある。 | |
styling | スタイル付け | スタイル付け | |
symbol | シンボル | symbol 要素など、あらかじめ定義しておくことにより何度も再利用できるグラフィックを指す。 | |
syntax | 構文 | semantics 参照。いちおう「構文」としているが、「構文と構造」とすべき箇所もあるかもしれない。 | |
target | 対象/標的 | 何らかの効果が適用されるものを指す場合は「対象」、イベントの配送先となる要素を指す場合は標的としている。 | |
translation | 並進 | 座標系, 変換, 単位 | 並進(変換)は平行移動による変換と同義。あまり聞き慣れない用語かもしれないが、他の変換(伸縮, 回転, 斜傾)と同じように二字熟語にすることにこだわった。 |
transparent black | 黒地透明 | 訳者が適当に思える訳としてあてがってみたもの。「黒地透明に初期化されたキャンバス」とは色チャンネルもアルファチャンネルも値が0に初期化されたキャンバスを意味するものと思われる。すなわち、その上に描画しても/それを背景に合成しても実質的な混色は行われないことになる。「無地」という訳も考えられるが広く使われ過ぎていて意味が曖昧になるのを避けた。 | |
tree | 木 | 「ツリー」とも訳される。「文書木」とはXML 文書における要素の包含関係に基づく包含階層の木構造を指す(要素が枝分かれ部分、要素の子要素を各枝に比喩させた意味において)。「描画木」,「インスタンス木」という言葉も現れるがいずれもこのような木構造を表す。描画木は描画の対象と処理手順の構造を表すものと考えて良いだろう。 | |
trigger | 発火する | イベントを生じさせること。 | |
Unicode code point | ユニコード・コードポイント | テキスト | ユニコード文字の一つの文字を表すコード(どの文字なのかを特定する数値)を意味すると思われる(正式な概念は訳者には定かではない)。 |
user | 利用-/利用者 | 以前の版では、利用座標系(user coordinate system ), 利用空間(user space ), 利用単位(user units )などを「ユーザー座標系」等々と訳していたが、日本語では「ユーザー」は「利用者」を指すのが一般的なので、違和感を覚えていた。「利用単位」はどうも一般的すぎる感じもしなくはないが、統一性を考えれば仕方が無いだろう。 | |
version | 版/バージョン | 「将来版」など、どのバージョンか特定されないものを指す場合は「版」、バージョン番号や実在する文書など明示的に何らかのバージョンを指す場合は「バージョン」としている。 | |
Web | ウェブ | 「Web 」の頭文字は常に大文字。World Wide Web を指すと考えて良いだろう。「ウェブ」と「インターネット」という言葉は同じような意味に使われることが多いが、背景にある概念は異なっている様に思われる。 | |
view | SVG ビュー | リンク | SVG 文書の表示状態(ズームとパンの状態)を指す。以前は「SVG 表示」と訳していたが、一般的に過ぎるので「ビュー」に変更(2008/02/22 )。 |
viewer | ビューア | 文書を表示するためのプログラムを指す。 | |
viewport | ビューポート | 座標系, 変換, 単位 | 「表示域」という訳もある。 |
zoom | ズーム | 対話性 | 伸縮とは異なり、一様に拡大または縮小させて表示させることを意味する。 |
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