この文書は、W3C の勧告候補 (Candidate Recommendation)、"CSS Mobile Profile 2.0" (2008 年 12 月 10 日付) を独自に翻訳したものです。この仕様書の正式なものは W3C のサイトにある英語版であり、その著作権は W3C が保有しています。翻訳に誤りがある可能性に留意してください。参照の際は原文と対比することを推奨します。

なお、この文書の翻訳にあたり、ToyFish.Net独自に翻訳した2001年1月29日付け草案の翻訳と、JIS 標準情報 (TR) の「段階スタイルシート 水準2(CSS2)」を参考にしました。いくつかの個所では、引用も行っていますが、技術的内容を変えない範囲で記号や用語、言い回しを変更しています。

翻訳の最終更新日: 2008 年 12 月 14 日


W3C

CSS Mobile Profile 2.0

W3C 勧告候補 2008 年 12 月 10 日

このバージョン:
http://www.w3.org/TR/2008/CR-css-mobile-20081210
最新バージョン:
http://www.w3.org/TR/css-mobile
http://www1.ttcn.ne.jp/amotohiko/css-mobile
前のバージョン:
http://www.w3.org/TR/2007/CR-css-mobile-20080801
編集者:
Svante Schubert, Sun Microsystems Inc. <>
以前の編集者:
Robin Berjon, Expway <> (初期草案)

概要

この仕様は主に、例えば携帯電話のような制限されたデバイスでの CSS の実装間での相互運用性の基礎となるべく考案された、CSS 2.1 [CSS21] のサブセットを定義するものです。その目的は CSS の完全な仕様と互換性を持たないプロファイルを規定するものではありません。むしろ、プラットフォームの制限により仕様のすべてに対応することが出来ないような実装系が、一般的なサブセットを実装することにより、単に制限された実装との間だけでなく完全なものとの間でも相互運用性を確保することにあります。付け加えると、この仕様は可能な限り OMA の Wireless CSS 1.1 [WCSS11] 仕様に沿うようになっています。また同時に、OMA により OMA Wireless CSS 1.2 [WCSS12] の調整作業が行われています。これは、CSS Mobile Profile 2.0 と OMA Wireless CSS 1.2 [WCSS12] の間の遵守項目の必須条件の調整を目的としています。

この文書の位置付け

この節は、公開時点でのこの文書の位置付けについて述べたものです。他の文書がこの文書を置き換えることがあります。W3C が現在公開している勧告その他の技術文書の最新のものの一覧は、http://www.w3.org/TR/ の W3C 技術レポート索引にあります。

この文書は CSS Working Group により 勧告候補 (Candidate Recommendation) として作成されました。

勧告候補は、広く見直されており、実装される準備が完了した文書です。W3C はこの仕様を実装し、公開メーリングリスト www-style@w3.org (アーカイブ) へとコメントを返すことを奨励しています。電子メールを送信する際には、件名に “css-mobile” という文言を先頭に入れてください。例えば “[css-mobile] …コメントの要約…” のようにお願いします。

勧告候補としての公開は、W3C メンバーシップによる保証が含まれているとは意味しません。これは草案の文書であり、いつでも他の文書により更新、置換、破棄される可能性があります。この文書を「未完成品」以外のものとして引用したりするのは不適切です。

2004 年 2 月 5 日付けの W3C 特許ポリシーに基づいて作成されました。W3C はグループで提出された、公開特許情報一覧 を整備します。また、そのページは特許の公開方法についても述べられています。権利主張 (Essential Claims) が含まれていると確信している、特許に関する実際の知識を有している個人は、W3C 特許ポリシー第 6 節に基づき情報を公開せねばなりません。

勧告候補の段階を終了するためには、次の要件が満たされる必要があります。

  1. 少なくとも 2 つの、この仕様のすべてを満たす実装が現れること。
  2. 最低 6 ヶ月間、CR 期間が経過すること。これは実装の際のフィードバックを提供してもらうために必要な期間を与えるという意味があります。

marquee-* と overflow-style プロパティにはリスクがあります。

この仕様のテストスイートは CR 期間に作成されます。実装上の詳しい要求項目や、実装についてのレポートへの参加のお誘いについては、初期実装レポート (preliminary implementation report) のページにて提供される予定です。実装者はフィードバックを 2009 年 2 月 1 日までに返信することが求められています。

この文書は前回の草案と、編集上の変更が加えられた以外同じものになっています。

目次

1. 序説

この文書仕様は、CSS 2.1 [CSS21] に基づいた CSS のプロファイルと概していえますが、CSS 3 の新機能にも要求されるものがあります。更にこの文書では、より高度なユーザエージェントで実装されるような、任意の機能セットも定義しています (OPTIONAL) 。

2. 適合条件

The key words of descriptive assertions and RFC 2119 terminology. 本文書中の、「しなければならない (MUST) 」、「してはならない(MUST NOT) 」、「要求される、必須 (REQUIRED) 」、「望ましい (SHALL)」、「望ましくない(SHALL NOT) 」、「すべきである (SHOULD) 」、「推奨される (RECOMMENDED) 」、「しても良い (MAY) 」、および「任意 (OPTIONAL) 」と言ったキーワードは、RFC 2119 ([RFC2119]) で述べられているとおりに解釈されることとなっています。

この仕様の目的が相互運用性の最低水準を定めるというものですので、ユーザエージェントは CSS 2.1 やその後継の版の CSS ファミリの勧告に従った CSS 文書を受け入れても構いません (MAY)。

この仕様に従う為には、ユーザエージェント、オーサリングツール、及びコンテンツは CSS 2.1 仕様 [CSS21]適合条件及びエラー条件節に、以下の修正を施したものに従わねばなりません (MUST)。

  1. この仕様書で対応と記された機能のみが必須 (REQUIRED) です。必須 (REQUIRED) とされたものとは別に、任意 (OPTIONAL) のものも追加で示してあります。これらについては高度なユーザエージェントで実装されるかもしれないものとなっています。これら (高度な) ものは、[WICDMobile10] での CDF では必須 (REQUIRED) とされています。CSS 2.1 のより広範なものの対応は任意です (OPTIONAL)。
  2. どの CSS 2.1 メディアタイプがサポートされるかという要求は厳しくなります。メディアタイプ handheld 及び all を受け入れ、解析しなければなりません (MUST)。その他のメディアタイプについても、受け入れて解析しても構いません (MAY)。
  3. ユーザエージェントは文書からリンクされた代替スタイルシートを選択することを可能にしなければならない (MUST) ことも要求されます。また製作者スタイルシートの無効化の方法の提供も推奨されます (RECOMMENDED) が、必須 (REQUIRED) から緩和されます。

3. セレクタ

セレクタは CSS 2.1 仕様 [CSS21]セレクタ章で定義されています。以下の表は、CSS 2.1 で定義されたセレクタのうちどれをサポートしなければならないか (MUST) を示しています。

セレクタの種別 意味 適合条件
汎用セレクタ * あらゆる要素と一致する。 必須 (REQUIRED)
型セレクタ E あらゆる E 要素と一致する。 必須 (REQUIRED)
子孫セレクタ E F あらゆる F 要素のうち、E 要素の子孫であるものと一致する。 必須 (REQUIRED)
子セレクタ E > F あらゆる F 要素のうち、E 要素の子であるものと一致する。 必須 (REQUIRED)
リンク擬似クラス E:link 要素 E がハイパーリンクのソースアンカであって、ユーザにより訪問されたものと一致する。 必須 (REQUIRED)
リンク擬似クラス E:visited 要素 E がハイパーリンクのソースアンカであって、ユーザにより訪問されたものと一致する。 必須 (REQUIRED)
動的擬似クラス E:active 要素 E がユーザにより作動させられたものと一致する。 必須 (REQUIRED)
動的擬似クラス E:focus 要素 E がフォーカスを保持している (キーボードイベントやその他形式のテキスト入力を受け入れる) ものと一致する。 必須 (REQUIRED)
クラスセレクタ .warning 言語による。((X)HTML では、class 属性が同名のトークンを含むような要素と一致する。) 必須 (REQUIRED)
ID セレクタ #myid ID が "myid" に等しいあらゆる E 要素と一致する。 必須 (REQUIRED)
グループ化 E1, E2, E3 { ... } 同一のスタイル宣言を共有する、要素のグループと一致する。 必須 (REQUIRED)

4. @ 規則

@ 規則は CSS 2.1 仕様 [CSS21]@ 規則節で定義されています。以下の表では、CSS で定義された @ 規則のうちどれをサポートしなければならないか (MUST) を、最後の欄を必須 (REQUIRED) とすることにより示しています。高度なユーザエージェントでの実装を提唱するに留めた @ 規則については、任意 (OPTIONAL) としてあります。

規則 定義 適合条件
@charset スタイルシートの文字エンコーディングを定義する。 必須 (REQUIRED)
@import 外部スタイルシートをインポートする。 必須 (REQUIRED)
@media 1つ、あるいはそれ以上の特定のメディアに適用するスタイルの組をグループにする。 必須 (REQUIRED)
@namespace デフォルト名前空間の定義、名前空間プレフィクスに対応した名前空間の定義を行う。 任意 (OPTIONAL)

5. プロパティ

プロパティは CSS 2.1 仕様 [CSS21] のいくつかの章で定義されています。ただし marquee プロパティについては、CSS ボックスモデル [CSS3BOX] にて定義されています。以下の表は、CSS で定義されたプロパティのうちどれをサポートしなければならないか (MUST) を、最後の欄を必須 (REQUIRED) とすることにより示しています。高度なユーザエージェントでの実装を提唱するに留めたプロパティについては、任意 (OPTIONAL) としてあります。また元のものから省かれている構文がある場合については、それについても示しています。この構文は CSS 2.1 と同じ値の仕様で表されます。あるプロパティに適用される制限は、その短縮版にも同様に適用されます。

プロパティ 構文 (CSS から変更がある場合) 適合条件
background-color 必須 (REQUIRED)
background-image 必須 (REQUIRED)
background-repeat 必須 (REQUIRED)
background-attachment 必須 (REQUIRED)
background-position top | center | bottom | left | right | inherit 必須 (REQUIRED)
background 必須 (REQUIRED)
border-top-width
border-right-width
border-bottom-width
border-left-width
必須 (REQUIRED)
border-width 必須 (REQUIRED)
border-top-color
border-right-color
border-bottom-color
border-left-color
必須 (REQUIRED)
border-color 必須 (REQUIRED)
border-top-style
border-right-style
border-bottom-style
border-left-style
none | solid | dashed | dotted | inherit 必須 (REQUIRED)
border-style none | solid | dashed | dotted | inherit 必須 (REQUIRED)
border-top
border-right
border-bottom
border-left
必須 (REQUIRED)
border 必須 (REQUIRED)
bottom 任意 (OPTIONAL)
clear 必須 (REQUIRED)
color 必須 (REQUIRED)
display inline | block | list-item | none | inherit 必須 (REQUIRED)
float 必須 (REQUIRED)
font-family 必須 (REQUIRED)
font-style 必須 (REQUIRED)
font-variant 必須 (REQUIRED)
font-weight 必須 (REQUIRED)
font-size 必須 (REQUIRED)
font 必須 (REQUIRED)
height 必須 (REQUIRED)
left 任意 (OPTIONAL)
list-style-type disc | circle | square | decimal | lower-roman | upper-roman | lower-alpha | upper-alpha | none | inherit 必須 (REQUIRED)
list-style-image 必須 (REQUIRED)
list-style 必須 (REQUIRED)
margin-top
margin-right
margin-bottom
margin-left
必須 (REQUIRED)
margin 必須 (REQUIRED)
marquee-direction [CSS3BOX] 必須 (REQUIRED)
marquee-loop [CSS3BOX] 必須 (REQUIRED)
marquee-speed [CSS3BOX] 必須 (REQUIRED)
marquee-style [CSS3BOX] 必須 (REQUIRED)
max-height 必須 (REQUIRED)
max-width 必須 (REQUIRED)
min-height 必須 (REQUIRED)
min-width 必須 (REQUIRED)
outline-color 任意 (OPTIONAL)
outline-style none | solid | dashed | dotted | inherit 任意 (OPTIONAL)
outline-width 任意 (OPTIONAL)
outline 任意 (OPTIONAL)
overflow [CSS3BOX] auto 必須 (REQUIRED)
overflow-style [CSS3BOX] marquee 必須 (REQUIRED)
padding-top
padding-right
padding-bottom
padding-left
必須 (REQUIRED)
padding 必須 (REQUIRED)
position 任意 (OPTIONAL)
right 任意 (OPTIONAL)
text-indent 必須 (REQUIRED)
text-align 必須 (REQUIRED)
text-decoration none | blink |underline | inherit 必須 (REQUIRED)
text-transform 必須 (REQUIRED)
top 任意 (OPTIONAL)
vertical-align top | middle | bottom | baseline | inherit 必須 (REQUIRED)
visibility 必須 (REQUIRED)
white-space 必須 (REQUIRED)
width 必須 (REQUIRED)
z-index 任意 (OPTIONAL)

有益なノート

6. 構文

ユーザエージェントは、CSS 2.1 仕様 [CSS21]節で定義されている、次に上げる例外を除いたすべての値に対応しなければなりません (MUST)。

  1. カウンタ値への対応は任意です (OPTIONAL)。
  2. CSS2 システム色及びフォントのユーザの好みへの対応は任意です (OPTIONAL)。

謝辞

編集者より、この文書の前バージョンの著者、Ted Wugofski (Openwave)、Doug Dominiak (Openwave、前 Motorola)、Peter Stark (Ericsson)、そして Tapas Roy (Openwave) に感謝を表します。また OMA Wireless CSS 仕様及び CSS 2.1 仕様の著者にも感謝を表します。加えて、この仕様に関わってくれた、CDF WG にも感謝したいと思います。

参考文献

参考仕様

[CSS21]
Bert Bos ほか。Cascading Style Sheets, level 2 revision 1。2007 年 7 月 19 日。W3C 勧告候補 (作業中)。URL: http://www.w3.org/TR/2007/CR-CSS21-20070719
[CSS3BOX]
Bert Bos。CSS3 module: The box model。2007 年 8 月 9 日。W3C 草案 (作業中)。URL: http://www.w3.org/TR/2007/WD-css3-box-20070809
[RFC2119]
S. Bradner。Key words for use in RFCs to Indicate Requirement Levels。Internet RFC 2119。URL: http://www.ietf.org/rfc/rfc2119.txt
訳注: RFC において要請の程度を示すために用いるキーワード。URL: http://www.ipa.go.jp/security/rfc/RFC2119JA.html
[WICDMobile10]
Timur Mehrvarz ほか。WICD Mobile 1.0。2007 年 7 月 18 日。W3C 勧告候補(作業中)。URL: http://www.w3.org/TR/2007/CR-WICDMobile-20070718

その他有益な参考文献

[MOBILE-BP]
Jo Rabin; Charles McCathieNevile。Mobile Web Best Practices 1.0, Basic Guidelines。2006 年 11 月 2 日。W3C 勧告案。URL: http://www.w3.org/TR/2006/PR-mobile-bp-20061102/
[WCAG10-CSS-TECHS]
Wendy Chisholm; Gregg Vanderheiden; Ian Jacobs。CSS Techniques for Web Content Accessibility Guidelines 1.0。2000 年 11 月 6 日。W3C 技術ノート。URL: http://www.w3.org/TR/2000/NOTE-WCAG10-CSS-TECHS-20001106
訳注: ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン1.0 CSS技術書。URL: http://www.zspc.com/documents/wcag10-tech/css-techniques/
[WCSS11]
Open Mobile Alliance。Wireless CSS Specification。2006 年 10 月 20 日。1.1 正式版。URL: http://www.openmobilealliance.org/technical/release_program/docs/Browsing/V2_3-20080331-A/OMA-WAP-WCSS-V1_1-20061020-A.pdf
[WCSS12]
Open Mobile Alliance. Wireless CSS Specification Version 1.2。2007 年 9 月 21 日(作業中)。URL: http://www.openmobilealliance.org/ftp/Public_documents/MCE/MAE/Permanent_documents/OMA-TS-WCSS-V1_2-20070921-D.zip

[訳注: 各仕様の日本語訳については、http://www.w3.org/2005/11/Translations/Query?lang=ja に情報がまとめられています。未掲載のもので見つかったものは特に付記してあります]


翻訳: もとひこ <amotohiko_mozillafirebird@yahoo.co.jp>